第9回 富士通株式会社

自社テクノロジーの集大成
それが「らくらくホン」

富士通株式会社
ユビキタスビジネス戦略本部 プロモーション統括部 統括部長 土井敬介 氏
モバイルプロダクト統括部 第一プロダクト部 シニアマネージャー 古木健悦 氏

 

富士通株式会社様は、テクノロジーをベースとしたグローバルICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)企業です。人々がICTの力を活用して、ビジネス・社会のイノベーションを起こし、豊かな社会を築いていく「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティ」の実現を目指しており、「らくらくホン」を開発するモバイル事業は、人とのインターフェイスの一部を担っています。今回のインタビューでは、携帯電話市場を取り巻く現状や「らくらくホン」の開発に取り組まれた経緯、開発プロセスや海外事業の展開までをお聞きしました。

2014年10月 取材

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Q. まずシニア向けの携帯電話にお取り組みを始められた経緯からお教えください。

古木氏 らくらくホンは元々他メーカーが初号機を作られたのですが、弊社は2001年2号機(F671i)からお声掛けをいただきました。 当時、携帯電話は、シニア層にはまだまだ行き届いていない状況でしたので、シニアの方々に便利に積極的にご利用いただけるような携帯電話を開発しようという取り組みを開始しました。 一方、一般の方々には携帯電話はかなり普及していた段階でしたので、携帯電話以外の市場を見て、シニア向けの携帯電話市場も今後同様に伸びるだろうという予測を持っていました。 ちょうどシニア向けのプロダクト・サービスが徐々に増えてきている状況だったと記憶しています。

らくらくホン実機-右が初号機で時代順に並ぶ-左が最新機種-らくらくスマートフォン
らくらくホン実機-右が初号機で時代順に並ぶ-左が最新機種-らくらくスマートフォン

Q. 富士通さんとしての初号機の売れ行きは如何でしたか?

土井氏) 当初は、スロースタートだったと記憶しています。 冒頭古木が申したように、シニアの方が携帯電話を利用する時代が到来するだろうという見込みはありましたので、手ごたえのようなものは感じていましたが、最初から販売が好調だったというわけではありません。

Q.当時シニアの方が集まるマーケット展望の裏付けとして、リサーチ等はされましたか?

古木氏) ご存知のとおり、シニア市場は分析や攻略が困難な市場です。たとえばリサーチするにしても、これまで利用したことのないものを取り上げて、「これを利用したいですか?」という問いを投げかけても、参考になる情報は得られません。その点を踏まえ、弊社はある程度の「仮説」をもってプロジェクトを開始しました。

実際にシニアの方が集まる現場に赴き、携帯電話の活用にどのような課題があるのか、またどのような利用方法が考えられるかという意見を掬い上げて、その上で商品開発に転嫁させる方法を採用しました。そして、この方法は、今でも変わらず継続しています。

また、「らくらくホン」リリース当初から、全国の携帯電話ショップで「携帯電話教室」が開講されているのですが、参加者の方の高齢者比率は比較的高く、教材は必然的にらくらくホンになります。
全国にいる拠点社員が、キャリア様のご支援という形で教室に赴き講師としてサポートします。それを実施することで、”利用者の声”がわかります。

どの携帯電話を購入しようか迷われている方や、上手く使いこなせない方等、つまずく箇所やご要望の声が上がってきます。

それらを集約することにより、実際にご利用されているお客様の声に耳を傾けることができ、こうした仕組みを製品開発に活かしています。

Q. 開発において特に重心を置いていらっしゃるのはどのような点でしょうか?

ユビキタスビジネス戦略本部-プロモーション統括部-統括部長-土井敬介氏

土井氏) らくらくホンのアプローチは、携帯電話の基本動作、いわゆる”見る”、”聞く”、”話す”、”操作する”を徹底的に磨き上げることの積み重ねです。
ですので、”聞きやすさ”や”見やすさ”という基本性能は、どこにも負けないと自負する技術を注入しています。
シニアにとっても利便性の高い機能は使いやすさに配慮し徐々に追加しておりますが、反面、遊びの機能や派手な部分には敢えて手を出しません。
すべては、シニアの方や機械に強くないお客様にも使いやすいと感じてもらうための戦略です。

この点については、富士通研究所と共同で技術開発を行っており、結果として当社からリリースする携帯電話の中で、最もテクノロジーが注入されている商品が「らくらくホン」だと言えるかもしれません。

「らくらくホン」は、あくまでユニバーサルデザインの観点から開発しています。結果として、シニアの方もご利用しやすいですし、それ以外の方にも利用しやすい仕様を目指しています。
シニア層のみならず、目がご不自由な方にも幅広くご利用いただいているのも大きな特徴です。

Q. ハードウェア開発においてご苦労された点はありますか?

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古木氏) とにかく多くのテクノロジーが集結している「らくらくホン」ですので、言い出せばキリがないですが…(笑)

まず挙げられるのは、「音声読み上げ」機能ですね。これは、メールやHP上のコンテンツを音声で読み上げる機能ですが、弊社の初号機から盛り込んでいる機能です。商品開発のたびにモニターとして目がご不自由な方にご参加していただき、たくさんのご意見をお聞きして、さらに改善を積み上げてきた経緯があります。

また、ディスプレイは特注のモノを採用しています。他社の携帯電話の液晶のほとんどは、縦長で進化してきました。しかし、「らくらくホン」の場合は、文字の一覧性と大きさを実現するために、横幅をきちんと保てるようなディスプレイを採用し続けています。

さらに言えば、キー部分にも拘りがあります。新機種のほとんどはシートキーを採用しているため、”押した!”という実感が残りません。「押し感」を保つよう心掛けています。

また昨今売れ行きが伸長している「らくらくスマートホン」は、”触れて確認、押して動く”という「らくらくタッチ」機能というのを付けました。通常のスマートホンは指で触った感覚が残らないのでボタンを操作したことがわかりませんが、この「らくらくタッチ」は、触れた時に読み上げ、そのまま押し込めば起動する直観的な読み上げ機能を実現しています。

土井氏)「らくらくホン」から「らくらくホン」に買い替えるお客様、すなわちリピートが非常に多いのも特徴です。
使い慣れた操作感を求めて「らくらくホン」をお選びいただいている以上、”変わらない安心感”をご提供し続けることもメーカーとしての責務と考えています。

 

Q. らくらくホンユーザー向けのコンテンツサービスについても教えて下さい。

土井氏) 「らくらくコミュニティ」というSNSサービスがあります。らくらくコミュニティの利用者は、累計15万人を突破しました。一回ご利用になられた方の多くがリピート利用してくださり、アクティブユーザー率が高いのが特徴です。

ファミリーページ

古木氏) もう1つ、新サービスを紹介させてください。らくらくコミュニティを更に進化させ、「ファミリーページ」という新機能を追加しました。
今回のサービスは、家族間のコミュニケーションを重視しています。子供の写真を投稿すると、フォトパネルのように自動的に待ち受け画面に写真を貼り付けられる機能です。ただ単に貼り付けただけではつまらないので、そこに一言メッセージを掲載できます。自ら発信せずとも、見るだけでも十分お楽しみになれます。
これをきっかけにしてコミュニティ・サービスをご利用していただけると、さらにお楽しみいただけて、世界がもっと広がります。

親御さん、お爺ちゃんお婆ちゃんばかりでなく、お子さんまでご参加いただいて”デジタルな親孝行”のためのツールとしてご利用いただければ嬉しいですね。

 

Q. 最後に、らくらくホンの技術やお取り組み方法が、海外から注目されていると聞きましたが、その点についてお聞かせいただけますでしょうか。


土井氏) 
2013年から、Orangeという世界的なオペレーターと組んで、フランスでらくらくホン事業を展開しています。フランスは日本に次いで高齢化が進んでいます。当然オペレーターとしても、マーケットの高齢化にどう対応すべきかという課題を持っています。

弊社は、日本において、らくらくホンで一定の成功を収めておりますので、注目をいただいています。

 

富士通株式会社ホームページ

https://global.fujitsu/ja-jp


 

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