第16回 大和ハウス工業株式会社

セラピー効果に期待度が高まる
メンタルコミットロボット「パロ」

ヒューマン・ケア事業推進部 ロボット事業推進室主任 大場奈緒子氏

 

今や、産業界のみならず生活に身近で様々な利便性を提供してくれるロボット。 その中で今回は、人を元気づけ、安らぎを与えるメンタルコミットロボット※1「パロ※2」をはじめとしたロボット事業を展開している大和ハウス工業株式会社に取材を行い、シニアマーケットの中で「パロ」がどのような役割を担っているのか、また今後のシニアマーケットへの展開についてお聞きしました。

※1「Mental Commit Robot」、「メンタルコミットロボット」は国立研究開発法人産業総合技術研究所の登録商標です。※2「PARO」、「パロ」は株式会社知能システムの登録商標です。

2015年11月 取材

シニア ビジネス 高齢者ビジネス

Q. メンタルコミットロボット「パロ」について教えて頂けますか?

「パロ」は、タテゴトアザラシの赤ちゃんをモデルに作られ、2002年2月26日にギネスブックに認定された「世界で最もセラピー効果のあるロボット」です。国立研究開発法人産業総合技術研究所の柴田崇徳上級主任研究員によって開発され、現在は、どのようにしてセラピーに取り入れていくかを二人三脚で考えています。

ちなみに、初めて販売を開始した時の「パロ」は第8世代ですが、現在のモデルは第9世代です。色のラインナップはホワイト・ゴールド・チャコールグレー・ももいろの4色です。
「パロ」には、アニマルセラピーと同等の効果が認められており、人を元気づける・動機づける「心理的効果」、ストレスを軽減させる「生理的効果」、コミュニケーションを活性化させる「社会的効果」の3つのメリットが期待されます。

コストの問題や、排せつ・食事、アレルギー等の問題で実際の動物を飼うことが難しい方に対して、24時間いつでも利用者に寄り添うロボットとして活用されています。主に認知症の周辺症状(BPSD)の抑制、緩和が期待され、特別養護老人ホームやデイサービスなどの高齢者向け福祉施設だけでなく、小児病棟などでも採用されています。

世界的にも、アメリカでは医療機器として認定されている他、デンマークでは、自治体が運営するケアホーム等の約70%にて導入されています。

また、オーストラリアにおいても、大規模な検証実験が行われています。私たちは「パロ」とともに国内の施設を巡りながら有効的な利用方法をご案内するとともに、現場のご要望などをメーカーへフィードバックする役割も担っています。

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Q.ターゲットに対してはどのようなアプローチをしてらっしゃいますか?

当社は、平成元年に医療・介護施設に関わる問題を専門的に調査・分析する研究機関「シルバーエイジ研究所」を設立しており、高齢者向け施設の建設棟数は国内でトップクラスの実績があります。

そのため、ロボットだけでなく医療・介護施設の建設や、有料老人ホームなどの施設へのご案内等、大和ハウスグループ全体で総合的なサポートを提供できる体制をとっており、お客さまに対して「お困りのことは何ですか」といえるようにしています。

このように施設のスタッフの皆様や、施設をご利用頂いているお客さまの幅広いご要望にお応えしていくことで、これから先も末永くお付き合いさせて頂きたいと考えております。

Q.パロにこめられたこだわりなどを教えてください。

「パロ」は、性別や性格などの細かい設定はあえてしておりません。それぞれご利用いただくお客さまが、「パロ」をどう捉えるのか、という点にお任せしております。

例えば、犬を飼っていた方が、「パロ」にその犬の名前を付けることで心穏やかに過ごしていただけるのであれば、それで十分であり、その方の気持ちに寄り添うことが大切なのです。この仕事に携わらせて頂いてから、逆に勉強させて頂いています。

さみしい気持ちを抱えていたり、何か役に立ちたいという気持ちがあったり、思ったことが上手く出せなかったりする方でも、「パロ」を介して思いを引き出してあげることができるかもしれませんし、パロをお世話することで守ってあげたい存在ができるという点は大きいと思います。

Q.本日は、パロの実物を見せて頂いているのですが、とても可愛らしいですね。

音を感知するセンサーを全面に備えており、音に反応して顔を向けるようになっています。
また、なるべく本物の動物に近づけるため、スイッチが見えないところに隠されていたり、縫い目が分からない形になっていたりと、様々な工夫が凝らされています。

さらに、少ないアクチュエイターで自然な動きができるように追求してつくられています。いい言葉には喜び、悪い言葉には悲しそうな反応を示します。叩かれた感覚もわかるのです。日々の触れ合いの中で元気に育っていったり、おとなしくなったり、まるで感情があるかのように学習していきます。

また、「パロ」は自分で温度管理をしており、温度が上がりすぎると自ら休憩し、動物のような自然な温かさを保ちます。実際に抱いていただくとわかると思うのですが、新生児の赤ちゃんと同じくらいの大きさと重さになっており、体重は約2.5kgです。これはお子様が生まれたときに抱っこした感覚を踏襲しています。

パートナーとして長くご使用いただくために、一体ずつ手作りで仕上げられており、それぞれわずかながら表情に違いがあります。
制菌加工、防汚加工、抜け毛加工が施された人口羽毛が使われています。電磁シールドを施してあるので、ペースメーカーをお使いの方でも安心してご使用いただけるようになっております。

Q. パロが施設にいたら本当に人気者になりそうですね。パロに対して実際はどのような反響があるのでしょうか?

非常にご好評をいただいています。心穏やかに触れ合ってもらうことができるロボットですので、コミュニケーションを活性化させるツールの一つとして使って頂きたいと思っております。施設でのアクティビティとしてはもちろん、個室に連れて行って可愛がる方もいらっしゃいます。

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また、非常に嬉しい報告をお手紙でも頂いています。認知症を患うことによる不安な気持ちを解消してくれた、本人も家族も「パロ」によって元気になったというお話を聞くと、私たちとしても大変喜ばしく思います。

Q.シニアマーケットをどのように見ていますか。

超高齢化社会で、働く人が少なくなっていく中、マーケットとしては非常に大きいと感じています。
中でも、高齢者世代にはロングライフ時代の老後の暮らしに対する不安とどう向き合うか、あるいは快適な老後生活を実現するためのQOL(生活の質)の向上が強く問われているところがありますが、一番大切なことは「元気で長生き」というところだと思います。

こうした、「元気で長生き」をサポートする製品については、現場で利用する方の声が開発側者に届きにくく、現場と開発側にミスマッチがあると言われています。

そこで、利用者の声を届けるためには、販売代理店である私たちが、こういった生活支援ロボットの特性を理解し、利用者側に伝え、あわせて、現場ではどのような活用がされているのか、どのような改善点があるのかを開発者に伝えるという役割は非常に重要だと感じています。

もちろん「パロ」が全ての方に合うわけではないと思います。これからコミュニケーションを自ら活発にとる、介護予防ができる、脳の活性化を進めるなどといった特徴的なロボットが世に出てくることで、選択の幅が広がり、一家に一台ロボットがある状態も夢ではないと考えております。

また、サービスロボット業界全体の活性化にもつながると考えています。弊社も様々な用途のロボットを展開することで、在宅にて、「元気で長生き」していただけるよう励んで参ります。

Q.課題などありましたらお聞かせください。

介護負担の軽減のためにも「パロ」やその他のロボットを使って頂けたら、と思っております。常に徘徊する方や目を離したすきに移動してしまう方に対しては、つきっきりになる必要があるため、介護する側にもストレスや腰痛などの負担がかかってしまいます。

高齢化社会の中で、人でなければできないところ以外をロボットにサポートしてもらうことができれば、効率的で良い働き方に変わっていくのでは、と感じます。

「パロ」は、日本ではまだまだペットの代わりという面が強いので、セラピーとしての使用方法を普及させていきたいと思います。まずは、多くの人に知って頂くことが必要だと感じています。

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Q.様々なロボット展開をされているということですが、そのほかにはどのようなロボットがあるのでしょうか。

尿を自動で吸引しおむつ交換の手間や負担を軽減する「ヒューマニー※3」、体重を免荷しながら安全な歩行訓練をサポートする「POPO(ポポ) ※4」、脚力が低下した方や下肢の不自由な方の自律動作をサポートするロボットスーツ「HAL(ハル) ※5」、難聴の方をサポートする耳につけない会話支援機器「COMUOON(コミューン) ※6」、悪路でもスムーズな車椅子の移動をサポートする「JINRIKI(ジンリキ) ※7」など、人・暮らし・社会をアシストするための事業展開を行っております。

実際に触れてみなければ分からないこともあるかと思います。大和ハウス東京ビル1階にございます、当社の高齢社会への取り組みを紹介する施設「D’s TETOTE(ディーズ テトテ)」では、コンセプトムービーや実際の商品を紹介しておりますので、当社にお越しの際はぜひお立ち寄りください。

※3「HUMANY(ヒューマニー)」、「Humany」はユニ・チャーム株式会社の登録商標です。
※4「POPO(ポポ)」は株式会社モリトーの登録商標です。
※5「ロボットスーツHAL(ハル)」「CYBERDYNE」、「ROBOTSUIT」はCYBERDYNE株式会社の登録商標です。
※6「COMUOON(コミューン)」はユニバーサル・サウンドデザイン株式会社の登録商標です。
※7「JINRIKI(ジンリキ)」は中村正善氏の登録商標です。

大和ハウス工業株式会社 ホームページ
http://www.daiwahouse.co.jp/index.html


 

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