「保育士資格を介護士にも取りやすく」保育職と介護職とで賛否に温度差

 厚労省は介護福祉士などの資格保有者に対し、保育士試験科目を一部免除する方針を決めています。今回は保育及び介護の現場で働く方に、取り組みへの賛否や保育士不足解消につながるかについてご意見を募りました。

 

 保育士や幼稚園教諭の人材紹介サービス【保育のお仕事】(https://hoiku-shigoto.com/)や、介護士、ケアマネージャーなどの人材紹介サービス【介護のお仕事】(https://www.kaigo-shigoto.com/)を展開する、株式会社ウェルクス(本社:東京都墨田区両国)は、読者を対象に行ったアンケートに基づいた独自のコンテンツを発表いたしました。

これは、介護福祉士などに対して保育士資格を取得しやすくする取り組みについて、保育、介護の現場で働く合計246名の読者を対象に調査を行ったものです。

調査は保育職、介護職別に実施しており、双方の職種で、取り組みへの賛否や期待する点、懸念点などに差があることが伺える内容になっています。

調査の概要(一部)
厚生労働省は、介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士の資格保有者に対して、2018年度保育士試験から、9科目の筆記試験のうち福祉関連で内容の重複する「社会福祉」など3科目の免除をすることを決めました。

福祉分野における人材不足に対処し、少ない人手で福祉を支える仕組みづくりを目指す取り組みとして、注目が集まっています。

今回はこの取り組みに対して、保育職と介護職双方の意見調査を実施しました。アンケート調査にご協力いただいたのは、保育士など保育現場で働く155名および介護福祉士など介護の現場で働く91名の読者の皆さま。
この取り組みについての賛否をそれぞれに伺ってみました。

「介護福祉士などの資格保有者が保育士資格を取得しやすくする取り組みに賛成ですか?」という質問に対し、
保育職では「賛成」が22%、「どちらかと言えば賛成」が27%、「どちらかと言えば反対」が32%、「反対」が19%と、約半数が取り組みに反対していることがわかりました。

「介護福祉士などの資格保有者が保育士資格を取得しやすくする取り組みに賛成ですか?」

一方、介護職では、「賛成」が37%、「どちらかと言えば賛成」が35%、「どちらかと言えば反対」が19%、「反対」が9%と、賛成派が7割以上を占め、保育職と介護職とで、この取り組みに対する感じ方が異なることが分かりました。
 
「介護福祉士などの資格保有者が保育士資格を取得しやすくする取り組みに賛成ですか?」

賛成の理由について、
保育職では「すでに取得している資格と重複する科目は受けなくて良いと思うから(55%)」「選べる職業の幅が増えるのは良いことだと思うから(43%)」「保育士の人材不足解消に役立つと思うから(42%)」などの意見が多く、介護職では「選べる職業の幅が増えるのは良いことだと思う(91%)」、「保育士の人材不足解消に役立つと思う(31%)」という結果になりました。
 
賛成の理由について

賛成の理由について

反対の理由については、
保育職では「資格取得を容易にすることが、保育の質の低下につながると思うから(78%)」「介護福祉士などと保育士とはまったく違う仕事・資格だと思うから(70%)」「保育士の人材不足解消にはつながらないと思うから(54%)」などの意見が多く、特に保育の質の低下については、特に不安が大きいことが伺えます。

 反対の理由について
 

介護職では「介護の職業と保育士とはまったく違う仕事・資格だと思う(68%)」というご意見の他にも「介護職の人材の流出(52%)」という懸念が大きいことが伺えました。

 
 反対の理由について

続いて保育職の方に、介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士が資格を取得して、保育の現場で働くことに対しての期待度を伺ってみました。

調査の結果「かなり期待できる(7%)」「まぁ期待できる(40%)」「あまり期待できない(37%)」「まったく期待できない(15%)」と、若干疑問視する意見が多い結果になりました。

保育の現場で働くことに対しての期待度

先の質問で「かなり期待できる」「まぁ期待できる」と回答された方に、期待する点を伺ったところ、「多角的な視点が入ることによる保育の質の改善」が67%と最も多く、「他の福祉資格におけるノウハウを保護者対応に活かすなどの知識活用(53%)」「異業種からの人材が入ることによる労働環境の改善(44%)」が続く結果となりました。
 
期待するのはどのような点ですか?

【回答者の声(一部抜粋)】
・保育士は意外と保育士しかしたことがない人が多く他業種の人が入ってくることで目線や考え方など刺激を受けることも多いと思う。(45~49歳・保育士/パート・アルバイト・派遣・女性)

・介護などで対応してきた丁寧な受け答えでの保護者への支援方法(伝え方)や子どもへの語りかけ方を共有してほしい。(30~34歳・保育士/正規職員・女性)

一方「あまり期待できない」「まったく期待できない」と回答された方に期待できないと思う点を伺ったところ、「各資格の専門性が希薄になること(72%)」「異業種からの人材が入ることによる保育の質の低下(51%)」などが大きな懸念点となっていることがわかりました。

期待できないと思う点

【回答者の声(一部抜粋)】
・子どもの動きに慣れておらず、危険な場面が増える。年齢だけいっていると臨機応変や柔軟性が損なわれる中、子どもたち相手に危険を察知できずにいることがあるのではないか。それでいて職員配置には1カウントされることで、現保育士の負担が増えることが考えられる。(35~39歳・保育士/正規職員・女性)

・福祉という点では同じ分野と思われるが、専門性からしても介護と保育はまったく別物だと思う。ただでさえ、業務が沢山あり大変なのに、保育をあまりわかっていない方が入ってこられても、人材不足は解消されるかもしれないが、指導などで逆に仕事が増えそう。(25~29歳・潜在保育士・女性)

介護という別の職種で培われた知識や視点が、保育職で多面的に活用できるのではないかという期待がある一方で、「保育と介護とはまったくの別物である」という考えのもと、指導を行う保育士の負担増、そして取り組みの賛否を伺った際にも多くの意見が寄せられた「保育の質の低下」に対して、懸念が大きいことが伺えます。

一方、介護職の方に対して、保育士資格を取得して保育の現場に立つことで貢献できると思うことについて伺ったところ、「多角的な視点が入ることによる保育の質の改善(54%)」「おむつ交換、保護者対応などノウハウを活かす(46%)」と、これまでの職場での経験を活かすことで保育現場に貢献できるというご意見が多く寄せられました。

貢献できると思う点

また、保育士資格を取得して保育の現場に立つことに対して懸念する点を伺ったところ、「各資格の専門性が希薄になること(51%)」や「教育や指導をする職員の負担増(44%)」という回答が目立ちました。
 
懸念する点

【回答者の声(一部抜粋)】
・介護と保育は同じように見えて違うもののように思う。幅広い知識が必要になる。(35~39歳・介護福祉士・女性)

・子どもに接するのと高齢者に接するのでは見るべき点が違うと思う。学び伸ばす、見守るを実践できるか不明である。(30~34歳・介護福祉士・女性)

・子ども好きだが現在の資格では障害者支援にしか活用できない為、裾野を広げるチャンスにはなると思うが…男性なのでどこまで受け入れられるか不安もある(30~34歳・初任者研修(ヘルパー2級)・男性)

介護職で培った知識や視点が、保育職で活用できるのではないかという期待があること、また保育と介護とは別物であるために不安が大きいことについては、介護職でも共通していることが伺えます。

最後に、保育職、介護職それぞれに対して「介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士が保育士として働く際に、どのようなポジションを任せたい(担当したい)ですか?」と伺ってみました。

まず保育職では「通常の保育士と差異なく、同様の業務を担当してほしい」が43%、「保育補助など、あくまでも保育士のサポートとしての業務を担当してほしい」が25%、「保育士以外の資格を活かせるような専任のポジションを担当してほしい」が30%となりました。

どのようなポジションを任せたいですか?

一方介護職では「保育士以外の資格を活かせるような専任のポジションを担当したい」が33%と最も多く、「通常の保育士と差異なく、同様の業務を担当したい」、「保育補助など、あくまでも保育士のサポートとしての業務を担当」がそれぞれ27%となりました。
 
どのゆうなポジションで働きたいか?

保育の現場で働く方からは、
「保育士として働くのであれば、保護者から見れば、どの保育士も自分の子どもを預かってくれる先生なので、差はなく働いてほしい。」(35~39歳・保育士/正規職員・女性)など、前職や保有資格がが何であれ、保育士資格を取得して働くからには、十分に保育士としての知識と意識を持って、対等に働いて欲しいという声が多く寄せられたのに対し、
介護職では介護のスキルや専門性を活かした視点での業務で貢献したいというご意見が多く、この意見の差をいかに埋めることができるのか。それも今後の課題の1つと言えそうです。

今回の調査から、保育士資格を取りやすくする取り組みについては、現場で働く方からも、ある程度保育士不足問題の改善にも役立つと考えられていることがわかりましたが、保育職では特に保育の質の低下について、介護職では介護職の人材流出や実際に保育の現場に立つことについて、それぞれ懸念も大きく、課題があることが伺えました。

保育職介護職ともにこういった懸念を払拭するための十分なフォローが必要であるとともに、特に取り組みに対して半数以上が反対をしている保育職に関しては、保育の質低下や新たな人材が保育士として働く上での指導等の負担増について、課題解決策を検討することも必要と言えるのではないでしょうか。

この調査について保育職、介護職それぞれの視点から記事を公開しています
◆保育のお仕事レポート(保育職視点)
【表題】97%の保育士が抱える複数担任制のストレス…軽減のコツは?
【URL】https://hoiku-shigoto.com/report/news/male-nurse-and-certified-care-worker/

◆ほいくらいふ(介護職視点)
【表題】介護職の70%が介護有資格者の保育士資格を取りやすくなる取り組みに賛成!保育士不足解消への切り札となるか
【URL】https://hoiku-me.com/other/nurture-news/42335/

アンケート調査概要
【アンケート実施概要/保育職】
・実施期間:2017年7月1日~7月15日
・実施対象:
保育園経営者・園長(5%)・保育士/正規職員(41%)・
保育士/パート・アルバイト(17%)・保育士資格取得見込(インターン・学生)(7%)・
その他の保育関連職(保育士資格保有者)(8%)・元保育士/潜在保育士(8%)・
その他(14%)
・回答者数:155人(平均年齢:35歳)
・男女割合:女性/94%・男性/6%

【介護職】
・実施期間:2017年7月10日~7月13日
・実施対象:
介護福祉士(79%)・初任者研修(ヘルパー2級)(40%)・
実務者研修(ヘルパー1級)(14%)・ケアマネージャー(10%)・
社会福祉士(7%)・精神保健福祉士(1%)・無資格(1%)・その他(13%)
・回答者数:91人(平均年齢:39歳)
・男女割合:女性/78%・男性/22%

※ご協力いただきました皆さま、貴重なご意見をありがとうございました!
※いただいた回答は一部抜粋し、個人が特定できないようご紹介しております。

■保育のお仕事とは?
保育士、幼稚園教諭専門の転職支援・適職紹介サービスです。主に転職や復職にて、保育園や幼稚園で働きたい保育士・幼稚園教諭と求人中の施設・事業所とを仲介する形で、復職・転職を全面的にサポートしています。その他、保育に携わるうえで役立つ情報を【保育のお仕事レポート】を通じて紹介しています。
【URL】https://hoiku-shigoto.com/

■ほいくらいふとは?
ほいくらいふ(https://hoiku-me.com)とは、保育士と幼稚園教諭、また保育士・幼稚園教諭の資格取得を目指す方に対する総合情報サービスです。主に製作や壁面紹介などの記事投稿、日々の業務をより良くするための遊び・歌やピアノ・絵本の紹介記事、また保育に関するニュース記事など、「明日の保育が楽しくなる」ことをテーマに情報を発信しています。

【本リリースに関するお問い合せ】
株式会社ウェルクス
担当:山本
電話番号:03-5638-6191
FAX番号:03-5638-6866
MAIL:chiemi-yamamoto@welks.co.jp
各サービスに関するコンテンツ作成・共同調査等のご要望がございましたらお気軽にご相談くださいませ。

シニアマーケティングの豊富な実績事例から、トータルコーディネートさせていただきます。
お気軽にお問い合わせください
マーケット最前線
データ集
メディア集
ビジネスマッチング
注目ビジネス
シニアマーケティングの考え方
連載コラム
編集室から
シニアライフ総研について
ニュース
お問い合わせ

Copyright©Roots of communication Co.,Ltd. All rights reserved.