2019.5.10 食器洗い機について

シニアの価値観や購買行動を知る上で、対象者の時代背景やモノ・コトの変化について踏まえておくことが非常に重要です。

例えば、シニアの幼少時の住環境と、現在の住環境を比較してみると、技術の発達によって全く異なります。今では当たり前になっている住宅設備が、幼少期には非常に高価なもので、富裕層の家にしかないモノも多くありました。

そこで、シニアの「モノ」に対する価値観を理解するため、内閣府から毎年発表される『消費動向調査』の「主要耐久消費財の普及率の推移」のデータから、シニア世代の住環境の変化について調べてみました。

第5回目のテーマは、”食器洗い機”について。

 

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食器洗い機の歴史

食器洗い乾燥機には、シンクやキッチンのキャビネット部分の下に設置する「ビルトインタイプ」と、調理台の上などに設置する据え置きタイプの2種類があります。「ビルトインタイプ」で約60%という圧倒的なシェアを誇るパナソニックの食洗機の歴史をご紹介いたします。

 

◆1960年:日本初の全自動食器洗い洗濯機を発売

アメリカから遅れること約50年。松下電器が日本初の「電気自動皿洗い機」を発売。上面を開閉する形は、まるで洗濯機のようだったそうです。
当時の発売価格は59,000円。この価格は当時の大卒の初任給(16,000円)の4倍弱と、かなり高額であったことからなかなか売れなかったそうです。

 

◆1969年頃:日本発の卓上型食器洗い機を発売

食事の洋食化が進む中、当時急速に普及しつつあった瞬間湯沸し器とつなぎ、そのお湯を利用することで油類の落ちをよくしました。(お湯の温度調整は瞬間湯沸かし器の側で行っていたそうです。)多くの技術的課題(防水構造や洗浄方式など)を解決し、現在の食洗機の基本構造ができあがりました。
愛称は「キッチン愛妻号」。


◆1988年代:業界初、日本のキッチン幅にあわせたビルトイン型発売/スリムタイプの卓上型発売

日本の台所にあわせた食器洗い乾燥機が開発され、1988年に日本のキッチン幅の規格にあわせた業界初の45cm幅対応ビルトイン型が発売されました。
また、日本の住宅を徹底的に調べ、約30cmのシンクサイドに置けなければ普及しないという結果から、スリムタイプの卓上型が発売され、近年の市場にある食器洗い乾燥機のスタンダードとなっている規格が誕生しました。

◆現在

ある程度基本的な構造が定着してきた食器洗い機は、以降、大容量化モデル、少人数世帯向けの設置面積が水きりかごサイズ(47×30cm)の「プチ食洗」など、多様なニーズに応える製品が開発されてきました。そして、超音波で発生した高濃度洗剤液を閉じ込めたミストで汚れを浮かして落とす「汚れはがしミスト」や「除菌ミスト」をはじめとする“手洗いではマネできない洗浄”、節水性能の向上といった基本性能を磨き上げ続けています。

 

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空気清浄機の普及率推移

食器洗い乾燥機は、2005年以降一般的に普及しはじめ、現在の普及率は32.1%となっておます。
一方、海外の普及率80%を超えるオーストラリアやノルウェー、70%強のスウェーデン、ドイツなどと比べるとまだまだ“一般的”とは言えません。

 

食器洗浄機の普及率推移

出典:内閣府「消費動向調査」平成30年『主要耐久消費財の普及率の推移』二人以上の世帯より

 

最近の新築戸建やマンションであればビルトイン型を導入される方が多いようですが、年代別に見ると、普及率はどう違うのでしょうか…

あくまでも世帯主の年齢になりますが、普及率の一番高い年代は35~39歳で42.5%となっています。国土交通省から発表された、『平成29年度 住宅市場動向調査報告書』によると、住宅購入の世帯主年齢は30 代が最も多く次いで40代となっておりますので、新居購入を機に導入している可能性が大きくなっています。

シニア世代はというと、世帯主の世代が上になるにつれ普及率は下がっています。60代以降は全体平均よりも低く、75歳以上に至っては、19.3%となっています。

 

 

世帯主の年齢別 食器洗い機の普及率

出典:総務省 平成26年『全国消費実態調査』主要耐久消費財に関する結果より

 

それでは、都道府県別に普及率を見てみるとどうなのでしょうか。

一番高いのは滋賀県で46.6%で、和歌山県44.6%、広島県43.9%と続きます。一番低いのは青森県14.5%、岩手県16.5%、福島県17.7%。

この数値から、北海道・東北地方を中心とした「東側」は、普及率30%未満の都道府県が集中。それに対して「西側」は、トップ3の県を含め、全体的に普及率が高くなっており、「西高東低」となっています。

 

都道府県別 空気清浄機普及率ランキング

出典:総務省 平成26年『全国消費実態調査』主要耐久消費財に関する結果より

出典:総務省 平成26年『全国消費実態調査』主要耐久消費財に関する結果より

 

『まず、普及率が高かった“西”のエリアに関しては、歴史的にも新しいものに対して積極的に取り入れる、開放的な姿勢が全体的にあります。お金の使い方にシビアな傾向もありますが、「無駄なお金を使いたくない」という気持ちがある一方で、利便性や自分にとってのメリットなど、「良い」と 感じたものに対してはお金を使うことが多いです。(中略)
反対に、北海道・東北地方を中心とした“東”エリアは、非常に保守的な傾向があります。新しいものが好きな人が少なく、競争意識というよりは、まわりの人にどう思われるかを気にしてしまう人も多いでしょう。保守的なので、新しいものだけではなく、エリア外のものに対してもシビアです。内向的な性質もあり、外からの意見よりも、内での意見の方が重視されがち。権威や伝統を重んじる風土であることから、社会的地位の高い人物や企業などからの発信・意見を重視する傾向にあるため、見知らぬブランドなどに対しては名前だけで「信頼できない」といったイメージを持たれてしまうこともあります。 
一度起こったこと や感じたことに対しての執着心も強い傾向にあるため、ネガティブなイメージを持たれてしまうと、それが簡単には払拭されないことが多いです。食器洗い乾燥機であれば、「大きい」「高い」などのイメージが一度ついてしまっていて、そこから抜け出せていない状況も考えられます。このことからすると、今回、北海道、青森県、新潟県や山梨県など、普及率の下位グループに“東”エリアが多いことは、納得の結果であると感じます。』

 

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出典:パナソニック株式会社プレスリリースより(2015年5月27~31日実施『「食器洗い」および「食器洗い乾燥機」に関する意識・実態調査』)

 


 

若い世代は共働きが多く、時短を求められるため、少々お金は払っても手間と時間を省けるため導入している家庭も多いようですが、シニア世代の普及率が低いのは、「電化製品に頼らず、自分でできる事はする!」という気持ちの表れでしょうか…。

ゴールデンウィークに実家に帰省した際、我が母(64歳)は食器洗いを手洗いでしておりましたが、「機械に頼ると、きちんと汚れが落ちてないか心配だし…」と言っておりました。もし母の意見がシニア世代の多数意見だとしたら、一定期間トライアルさせる機会を設ければ、購入意欲も高まるかもしれませんね!

 

 

 

 

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