亀山市が目指す地域包括ケアシステム

第2章 ケアシステムの中枢をなす2つの施設

総合保健福祉センター「あいあい」と
「亀山市立医療センター」

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第1章では、「三位一体の地域包括システム構築と市民啓発は亀山市だから進められる要因がいくつかある。」と述べた。ひとつ目は、高齢者の日常生活に密着したコミュニティスペースを行政が保有していたこと。そしてふたつ目は、在宅医療を推進していくうえで、緊急時(かかりつけ医が不在の場合や、高度医療を急遽必要とした場合など)に対応できうる医療施設を行政自身が運営していたことである。
前者の行政が監理・運営するコミュニティスペースとは、総合保健福祉センター「あいあい」であり、後者は緊急時に医療受け皿となり得る「亀山市立医療センター」がそれである。この章では、この2つの施設がケアシステムの中で果たす役割についてご紹介する。

2014年9月 取材


行政主導のコミュニティと相談窓口の一元管理

総合保健福祉センター「あいあい」には、温泉設備やカラオケ、喫茶、囲碁・将棋、フィットネスなどができる教養娯楽室があり、市民の特に高齢者の日常に広く利用され、朝バスでこの施設を訪れて一日を過ごし、夕方に帰宅する人も少なくない現状があった。 この施設の中の一角に、介護などの相談窓口である亀山地域包括支援センター「きずな」があり、市民には既に身近な存在として家族や自身に何かあった際に相談する場合はここであるとの認識が図れた訳である。

得てして、行政や民間問わず相談の窓口機能が乱立していたならば、市民の生活情報の集約はもとより、市民啓発の情報発信などは各所との連携を必要とするために不要な時間を要したり統一が難しかったりしたかもしれない。 これによって、行政主導のコミュニティと相談窓口の一元管理ができる体制ができたことはシステム仕組み作りに大きなアドバンテージとなった。

市民への安心感醸成と医療従事者への理解促進

「亀山市立医療センター」が緊急時の医療受け皿にできたことは、地域包括システムを構築する上でさらに多大なる要因となった。 市民全体へのシステムに対する安心感を醸成するうえでも欠かせない事はもちろん、仕組みを稼働させるために必要な医療従事者への理解を募る際の大きなエンジンとして機能したのである。 (なお、現在は「亀山市立医療センター」に加え、「みえ呼吸嚥下リハビリクリニック」も後方支援病院(バックベッド)として機能している)

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医療従事者、とくに利用者と対峙する担当医師(=かかりつけ医)が地域医療を行う上での課題として挙げたのが「自身が対応できない場合にどうするか?」であり、「そのバックベッド無しには、かかりつけ医としての責任が全うできない」という事がある。

元来、開業医は患者の方から診察に来てもらう「待ちのビジネスモデル」が根底にあり、地域医療を行うには、往診するという自らが「出向くビジネスモデル」に大きくシフトチェンジしなければならない。 ビジネスモデルの変化は、医師自身の医療方針や哲学の変更、私生活サイクルの変化なども強いる場合があり、それにはかなりの勇気を必要とする決断でもある。

高齢化の進展に伴う、「医師と患者とのかかわり方の変化」に行政がどうバックアップして時流に呼応するか・・・これへの一つの答えが「亀山市立医療センター」でもあったのである。


以上、亀山市が「行政」・「医療」・「介護」の三位一体のシステムを構築するうえで総合保健福祉センター「あいあい」「亀山市立医療センター」のいずれかが欠けていたならば、その道のりは難航、または異なる仕組み作りや市民へのアプローチを強いられていたかもしれない大きな要素である。

しかし、これらのインフラ要素があったとしてもシステム構築に向けた努力を、主体性と情熱を持って取り組んだ行政側担当者達、医療・介護関係者達が存在しなかったら間違いなく生まれてはいないだろう。自分たちの町を「住みやすく、安心して生活できるまちづくり」を自らの手で実施している亀山市のこの活力こそが「亀山モデル」であり、現代日本のあるべき姿として普及されることを期待したい。

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