全国老人福祉施設協議会/特別養護老人ホームの介護記録について、標準的な101項目を選定

2020/5/19

全国老施協加盟施設に対して介護記録の項目について調査し、
ケア記録システムを用いて全国で標準的に記録されている101項目を選定した。

全国の特別養護老人ホームをはじめとする高齢者福祉施設・事業所約11,000か所が加盟する公益社団法人全国老人福祉施設協議会(東京都千代田区)は、厚生労働省令和元年度老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等補助金)「特別養護老人ホームにおけるケア記録に関する調査研究事業」調査結果報告書を公表し、介護記録の簡素化及び全国的な均質化を目指して、標準的な101項目を選定した。
今後、標準的な項目の普及に加え、CHASEや他の厚生労働省施策との調和のほか、実地指導・監査において形式主義を脱し、実態を把握できるような運用の見直しが必要としている。

 

厚生労働省令和元年度老人保健健康増進等事業「特別養護老人ホームにおけるケア記録に関する調査研究事業」結果概要

厚生労働省令和元年度老人保健健康増進等事業「特別養護老人ホームにおけるケア記録に関する調査研究事業」結果概要

 

 全国老施協が行った今回の調査の目的は、全国の自治体毎に指導の内容や確認するケア記録の項目・確認文書に様々な差異が生じていること、それにより特別養護老人ホームの現場も、ケア記録ソフトを作成するベンダーにも負荷がかかっている可能性があり、その内容を明らかにすることであった。
 そのため特別養護老人ホーム、ベンダー、自治体に対してアンケートを発出し、その情報について抽出、分析を行い、以下の結果を得た。

 ① 手書きで記載されている項目は、すべての利用者に対して使用するために記載されている項目が多いこと
 ② 手書きで記載されている項目は実地指導において自治体に求められやすく、かつ提出に根拠のないものの可能性があること
 ③ 施設側においてケアの経過を記録するために、必要な記録が増えている可能性がある。またその内容に紐づいて自治体やベンダーが項目の確認や記録できる仕様にしている可能性が示唆されたこと

 

介護ケア記録、ベンダ、自治体間の相関関係

介護ケア記録、ベンダ、自治体間の相関関係

 

 これらの結果を加味して、ケア記録として標準的だと見込まれる101項目を設定し、今後実証等がなされるCHASE項目との整合についても濃淡を示した。

 

調査の結果得られた標準的な項目の考え方

調査の結果得られた標準的な項目の考え方

 

 今後はここで得られた標準的な101項目の活用、普及等を進めていくことを予定しており、具体的には次のとおりである。

1.標準的な項目の波及
 本調査研究結果による標準的な項目をベンダー各社に対して周知し、普及を進めていくべきと考えている。この点、ベンダーに対して、標準的な項目に関する本会の認証を行う取り組み等が考えられる。また、本調査結果により得られて視点については各自治体にも情報提供をし、理解を求めていくことが肝要である。

2.CHASE や他の厚生労働省施策との調和
 CHASE の一部の項目が標準的な項目では収集できないことから、当該項目の収集は現場にとって新たな負荷となることが想定される。このため、この標準的な項目をベースに、CHASE の適用にかかるフィージビリティ(実現可能性)を吟味していく必要がある。
 
 また、健康医療介護情報を連結させ、個人単位でのサービス利用実績について情報分析を進める動きがあり、こうした情報と、標準的項目との突合により、他のサービスとの情報共有も進むものと考えられる。

 3.今後の指導監査及び加算等の様式のあり方
 指導監査については、そのために別途様式を整え、準備が必要となる場合が多く、そのために介護従事者等も疲弊してしまうこともある。また、行政担当者が変わり、新たな附属書類の提示を求められるようになるなど、その対応には枚挙にいとまがない。今後は、様式を具備している如何の形式主義から、項目や実態が把握できれば良しとする文化に変えていく必要がある。
 
 ケア記録において手書きで記載する割合が高い項目については、自治体側が求めている項目との正の相関があり、自治体が実地指導で求めるがゆえに特養としても記録している可能性が示唆されている。どの項目について手書きの項目が必要なのか、その内容を整理していく必要がある。例えば、項目としてさらに精緻化することで、手書きで記載している情報を選択肢形式で表現することが可能ともなりうる。
 
 さらに、重要なのは、手書きで記載する割合が高い項目と、自治体が提出を求める場合の根拠がないとされた項目に正の相関が見受けられたことである。上記のとおり、内容の整理においては、特養、ベンダー、自治体三者の工夫が必要である。特養においては内容を構造化し、引き続きケアの標準化に向けた取り組みが必要であろう。ベンダー側では、手書き以外の入力方法により代替が可能かどうかといった観点からの検証のほか、自治体側ではそもそも根拠を説明できないものについては実地指導等で求めないなどの運用の改善が必要である。これらは、政策面においても後押しする取り組みが不可欠である。

4.ケア記録等の入力のあり方
 現在でも、見守りシステムや三軸センサーによる活動量の把握など、介護業界へのIoT をはじめとするテクノロジーの援用が進み、これまで考えられなかったデータを収集し、解析が行えるようになりつつある。いかに利用者・介護従事者にとって、装着や記録転記等の手間なく標準的な項目や他の情報へインプットできるか、またそれを時系列的なデータとして活用できるかという観点が、介護業界にもより波及することが期待される。
 全国老施協では、今後の介護報酬改定や予算等の拡充を実現のほか、介護現場が自立支援を達成するためにより質の高い介護を提供できる環境づくりに向けて、これからも様々な調査研究等を行う。引き続き現場の課題や実態を取り纏め、高齢者福祉の増進に向け活動を進めていく。

●全国老施協HP: 厚生労働省 令和元年度老人保健健康増進等事業「特別養護老人ホームにおけるケア記録に関する調査研究」報告書
https://www.roushikyo.or.jp/?p=we-page-menu-1-3&category=19326&key=22023&type=contents&subkey=327630

 

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